★ 月の話 ★

月にのぼったうさぎ

 これは、インドで伝えられていた神話です。
 昔、あるところに、うさぎときつねとさるが仲良く一緒に暮らしていました。三匹は、いつもこんなことを話し合っていました。
 「私たちが今けものの姿をしているのは、よほど前世での行いが悪かったからに違いない。せめてその償いに、これからは世のため人のため、何か役に立つことをしよう。」
 これを聞いた神様は、大変喜びました。
 「なかなか感心なけものたちだ。よしよし、何かいいことをさせてやろう。」
 そこで、神様はよぼよぼのみすぼらしいおじいさんに化けて、三匹の前に現れました。 今にも倒れそうなおじいさんの姿を見て、何とか役に立とうと、三匹は考えました。
 さるは木登りが得意だったので、あちらこちらの木に登り、おいしそうな木の実や果物をたくさん取ってきました。
 きつねは動きがすばしっこいのが自慢だったので、さっそうと野山を走り回り、川魚をたくさん捕ってきました。
 ところが悲しいことに、うさぎには自慢できるものが何も無かったのです。思いあまったうさぎは、おじいさんの目の前で火をたいて、こういいました。
 「私は何も取ってくることが出来ません。私の体を焼きますから、せめて私の肉を召し上がって下さい。」
そういうと、うさぎは火の中に飛び込み、たちまち黒こげになってしまいました。 この様子を見た神様は元の姿に戻り、けものたちに向かっていいました。
 「お前たち三匹には本当に感心しました。この次生まれ変わるときには、立派な人間として生まれてこられるようにしてあげよう。特にうさぎ、お前の姿は、ほうびとして月の中に永遠に飾っておくこととしよう。」
 こういったわけで、今でも月の表面には、黒く焦げたうさぎの姿が残されているのだそうです。