★ 星座神話 ★

【てんびん座】
 この天秤は、大神ゼウスと女神テーミスの間に生まれた正義の女神アストレア が、人間の罪を計るときに使う天秤であると伝えられています。
 はるかな昔、この世は「黄金時代」を迎えていました。一年中、季節は春で、 野には穀物や果物が実り続け、川はミルクやお酒が流れ、人々はいつも食物に満 たされ戦うことを知らず、世界中が平和に満ち溢れていました。 神々も人間とともに下界に住み、アストレアも人間に正義について説き聞かせな がら暮らしていました。
 やがて、時代は「銀の時代」に移りました。 季節が生まれ、暑さ、寒さの区別が出来、人々は畑を耕して種を蒔き刈り入れを しなければ食物を手に入れられなくなりました。そして、人々は家も建てるようになり、 個々に暮らすようになりました。次第に、強い者が弱い者を虐げるようになりまいた。 それを見た多くの神は、あいそをつかして続々と天界に戻っていきました。 ただ、アストレアは望みを捨てず、下界に踏みとどまって、人々に正義を説き聞 かせ続けました。
 さらに時代が進み、「銅の時代」を迎えました。 世の中は、嘘と策略と暴力がはびこり始め、人々は船を作って海を渡り、ほかの 国までも攻め落とすようになりました。地中から取り出した、鉄や金から剣を作 り、友人、親子、兄弟までが、争うまで落ちぶれてしまいました。 さすがのアストレアも耐えられなくなり、白い大きな翼を羽ばたいて、天界へと 戻り乙女座となって、変わり果てた下界を嘆きながら見下ろすことになりました。 女神と一緒になって活躍してきた天秤も、計りの許容量を越えた世の中で、その 役目も終え、女神の足元でそっと淋しげに輝いています。