★ 星座神話 ★

【しし座】

 むかし、ネメアの森に家畜や人間を襲う恐ろしい人喰いライオンがいました。そのライオンは、父親が化け物テュフォン、母親が半人半蛇のエキドナといわれ、生まれながらの化け獅子でした。
 さて、ギリシャの英雄ヘルクレスは、ゼウスの后ヘーラの呪いを受けて自身が行ってしまった罪を償うため、エウリステウス王の命令で12の困難な冒険に出かけます。
 その最初の冒険が、「ネメアの森の化け獅子退治」でした。怖いもの知らずのヘルクレスは、弓と棍棒を持って、ネメアに出かけていきました。ネメアのどこに化け獅子がいるのか、付近の住人に尋ねますが、みな恐れおののき、逃げていってしまいます。仕方なく、ヘルクレスは森の中で化け獅子を待ち伏せることにしました。7晩目の夜、ヘルクレスの前に、何を食らっていたのか、たて髪と舌を血まみれにした化け獅子が現れました
 ヘルクレスは獅子が十分近づくのを待ち、狙いを定めて弓を射ました。弓は確かに獅子に命中するのですが、岩や鉄板に当たったように、獅子の体ではね返ってしまいます。獅子はヘルクレスに気付くと、ひと際大きな雄叫びをあげ、猛然と襲いかかってきました。弓で傷付けられない不死身の体を持っていることを悟ったヘルクレスは、棍棒を振り上げ獅子の頭をめがけてひと振りしました。この棍棒は、ネメアの森に来る途中、カンランの大木を根ごと引き抜き作ったものです。棍棒とはいえ大木そのものであるし、第一、大木を素手で引き抜くほどの腕力で頭を一撃したのです。棍棒は木端微塵に砕け散りましたが、獅子もただでは済みません。よろめき、意識を朦朧とさせました。ヘルクレスは、ひるんだ一瞬を見過ごさず、獅子の喉を掴んで、全身の力を込め、両手で締め上げました。ギリシャ一の怪力で首を締め上げられた化け獅子もたまったものではありません。ついに口から泡を吹き、息絶えてしまいました。
 ヘルクレスはその獅子の皮を剥ぎ肩に掛け、首を切って兜のようにかぶって、王宮に戻ったから大変です。12の冒険を命じたエウリステウス王は、恐れおののいて宮廷の奥深く逃げ込んだと伝えられています。