★ 星座神話 ★

【おおぐま座とこぐま座】

 ギリシャ神話では、おおぐま座はニンフ(森や泉の精)カリストの姿で、こぐま座はカリストの子アルカスの姿だと伝えています。
 月の女神アルテミスのお伴にカリストという美しいニンフがいました。カリストは身を整え飾ることに関心がなく、いつも弓矢を持って、アルテミスのお伴をし、野原を駆け回っていました。ところが、大神ゼウスはカリストを見そめました。断ることのできないカリストは、彼の子を宿してしまったのです。
 それを知ったアルテミスはひどく怒り、ひざまづいて許しを乞うカリストを決して許しませんでした。呪いの言葉をかけ、熊の姿に変えてしまったのです。美しい姿が一転し、体中堅い毛に覆われ、爪は獣のかぎ爪に変わり、泣き叫ぶ声も「ウォー」という吠え声に変わってしまいました。猟犬にも吠え立てられ、カリストは仕方なく森の奥深くに逃げて行きました。
 そうして15年の歳月が過ぎ、カリストの産んだ子アルカスも立派な青年に育ちました。親に似て狩が好きで、毎日、野山を駆け回っていました。そんなある日、森の奥で、バッタリとメスの熊に出くわしたのです。その熊こそ、変わり果てたカリストの姿でした。カリストは一目見て息子のアルカスだと分かりました。嬉しさのあまり、自分の姿を忘れ、アルカスに駆け寄ったのです。母親だと知らないアルカスは驚き、自慢の矢をつがえ、駆け寄る大熊を射ようとしました。
 その様子をオリンポスの山から見下ろしていたゼウスは、この母と子を哀れに思い、アルカスも小熊の姿に変え、2頭の熊を天に放り上げ、星座にしました。
 しかし、妬み深いゼウスの后ヘーラは、日頃から疎ましく思っていたカリストとアルカスが仲良く輝いているのを見て我慢ならなくなりました。そこで、海の神オケアノスと女神テティスに頼み、この母子は他の星のように、1日に1回、海の下に沈んでひと休みすることが許されないようにしました。
 そのため、今でも、おおぐま座とこぐま座は、ひと晩中沈む事もなく北の空をぐるぐると回りつづけているのだと言われています。