★ 星座神話 ★
【エリダヌス座】
日の神ヘリオスの子フェートンは、ある日、友人に、
「僕のお父さんは日の神様 なんだ。」と自慢げに言ったところ、
「証拠もないくせに」と笑われました。 悔しく思ったフェートンは、母の許しを得て、遠く日の昇る東の果てに住む父親
に会いに出かけました。
宮殿に辿り着くと、ヘリオスは大変喜び、フェートンを抱きかかえて、
「お前は 間違いなく私の子だ。そうだ。はるばる訪ねてきたのだから、何か望みを叶えて
あげよう。」と言いました。 フェートンは迷わず、
「一度でいいからお父様の太陽の馬車を僕に走らせて下さい」
と頼みました。
さすがにヘリオスは困った顔をし、
「あの車を走らせるのは、非常に難しい。 日の出の頃に、急な上り坂を駆け上り、昼頃には、目も眩むような高所を通り、
夕方には天の急な坂を一気に駆け下りねばならぬ。第一、4頭の馬の扱いが非常
に難しい。どれだけ、馬が暴れても、毎日、決まった道以外は通ってはならないので、その手綱さばきが問題だ。」
「しかしお父様は、何でも望みを叶えてくれるとおっしゃいました!」
食い下がるフェートンに、さすがのヘリオスも、渋々許すことにしました。
さあ、夜明けです。 フェートンは、4頭の天馬に引かれた黄金の馬車にまたがり、あかつきの光と共に走り始めました。
しばらくして、4頭の馬は、車が軽くいつもと乗り手が違うことを悟りました。
さあ、大変です! 口から火を吹きながら、険しい東の坂道を一気に駆け上がると勝手気ままに走り
出しました。 やがて馬車の車輪からも炎が噴き出し、もうもうと燃え上がりました。
雲は真っ赤に焼け焦げ、地上にも大火が降り注ぎ、火山は地鳴りを上げて火柱を
上げ始めました。
フェートンは必死で馬を立て直そうとしますが、言うことを聞きません。そうしているうちに、馬車は天の最上段まで昇りつめました。ふと下界を見たフェートンは、あまりの高さに目が眩み、手綱を落としてしまい ました。ますます馬は勝手気ままに走り始め、天も地も猛火に包まれていったのです。その様子をオリンポスの神殿から見ていた大神ゼウスは、もう放っておけない
と、雷電の矢を投げつけ、太陽の馬車を打ち砕いてしまいました。
フェートンは、長い炎の尾を引きながら、流れ星のように真っ逆さまに、下界
を流れるエリダヌス河に落ちていきました。川の水は炎に包まれたフェートンの体をやさしく受け止め、冷やしてあげまし
たが、彼は二度と息を吹き返すことはありませんでした。
太陽の馬車に4頭の馬を結んであげたフェートンの姉妹たちも、エリダヌスの
川べりで、来る日も来る日も泣き続け、ついには川縁のポプラの木に変わってしまったと伝えられています。